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20040120 日本人の歴史意識 阿部謹也 著

歴史好きだといわれる日本人だが,その一方で歴史意識の欠如が問われることも多い.日本人にとって歴史とは何だろうか.これまで世間という視角から日本社 会・日本人を論じてきた著者が,西欧社会と比較しながら「世間」を歴史的に分析して,日本人の歴史意識を考える.歴史研究の総決算として書き下ろされたも の.

はじめに  
 問われる歴史意識の欠如/「世間」という日本独自の形/本音として生き続ける「世間」/本書の方法/「世間」とは何か/本書の構成
第一章 古代の知識人と「世間」  
 『万葉集』に見る「世間」/貧窮問答歌/『今昔物語』『源氏物語』の「世間」/『方丈記』の「世間」/経典にみる「世間」/親鸞の『教行信証』に見る「世間」/『般若心経』
第二章 古代の民衆と「世間」
 ミクロコスモスとマクロコスモス/因果応報の原理/雷を捕らえた話/狐を妻とした話/亀の恩返しの話/般若心経の不思議/寺の薪を盗んだ僧の話/悪い死に方をした非道の男の話/伊勢行幸をやめさせた話/虎になった役優婆塞の話/怨霊としての菅原道真/御霊信仰/「世間」の構造/「世間」の中の呪術の支配
第三章 呪術を否定した親鸞
 呪術的思考の否定/真宗と民族/蓮如と真宗教団/親鸞の弟子達の特異な集団
第四章 「世間」における歴史の位置
 「世間」と歴史/親鸞と歴史/「御消息集」から
第五章 「世間」の世俗化
 「世間」にとらわれない商人の誕生/『徒然草』の大福長者/「世間」=無常の否定/西鶴の「世間」-『日本永代蔵』/「世間」が神-『西鶴諸国ばなし』/ポトラッチ的意識-『仮名草子』/社会契約的意識-『心中天の網島』/近代化と二元的社会の形成/「社会」と「個人」という訳語の成立/教育勅語の発布/「世間」に関する書物の出版/抜け目なく生きる人々/巌谷小波の『世間学』
第六章 西欧における近代の始まり
 『奇跡を巡る対話』/西欧の人間と動物/地上の秩序と天国/貪欲の罪/協会の秩序が来世への保障/贈与・互酬関係の転換-西欧の場合/中世の宇宙観/「贖罪規定書」における呪術の否定/告白と個人の成立/巌谷小波の『世間学』再論/日本における自画像の問題
第七章 日本近代の二重構造――制度と人間関係
 新しい制度と旧来の人間関係/藤村の『破戒』と「世間」/国家の暦と「世間」の暦/一般の家庭/成人とは何か/「世間」の中の付合い/大学における人事/「世間」における評価/少年法の問題/「世間」の中の歴史/官学アカデミズムの成立/『日本国史絵物語』/個人という言葉の理解/学者達の日常生活
第八章 西欧における歴史意識と歴史学
 近代的歴史学の成立/東京商科大学の歴史学/西洋史、国史、東洋史の区分の成立/西欧における歴史意識の問題/協会の成立/ハインペルの歴史学/小さなヴァイオリン/日常生活の小秩序/ヨーロッパにおける歴史学の闘い/歴史的神話の形成/スメタナのリプシェ/事実の探求と意味の探求/教科書問題/欧米人にとって歴史とは何か/カーの『歴史とは何か』/歴史における方向感覚
第九章 日本人にとって歴史とは何か
 吉田松陰と天誅組/観客として眺める歴史/「世間」に起こった現象としての関心/「世間」体験からものを考える/歴史家と「世間」/日本における歴史学の将来/歴史は「世間」と闘う者にその姿を現す/「世間」を歴史として対象化する
あとがき